9月21日WEB新聞
(波聞風問)インパクト投資 良き社会へ「見えざる心」 安井孝之(朝日新聞DIGITAL)
先日ご紹介いたしましたG8インパクト投資タスクフォースシンポジウムの記事が
掲載されましたので、紹介いたします。
アダム・スミスの「国富論」に書かれた「見えざる手」をもじった「市場の見えざる心」がキーワードになった報告書が、15日に発表された。主要8カ国(G8)の政府関係者や金融、社会貢献活動の専門家らが1年かけてまとめたものだ。貧困や教育、福祉など社会的な課題を解決する「インパクト投資」の促進を提言した。
投資することで社会に良い変化を起こすのがインパクト投資。報告書には、障害者雇用を生み出したIT企業や、低所得者が多い地域に健康食を提供するNPOなど、持続的に収益を上げている「社会的企業」が多く紹介されている。そこに投資を振り向けよう、というのだ。
日本でも取り組みは始まっている。「ワクチン債」が2008年に国内で売り出された。予防接種事業に資金提供する国際機関が発行する債券だ。途上国の子どもへのワクチン接種を支援する資金を調達、加盟各国の寄付金を返済にあてる仕組みだ。
他にも「グリーン・ボンド(債券)」「ウオーター・ボンド」「中南米子育て支援債」といった地球温暖化対策や水関連事業、貧困対策への投資資金を集めている。
こうした「インパクト投資」債券の販売額は、日本で累計1兆円(14年3月末)に上る。60%のシェアを持ちトップの大和証券は「社会貢献に関心のあるお客さんが買っており、新しい顧客層を開拓した」(広報部)という。投資利回りが特別高いわけではないが、その効果への魅力が投資判断となっている。
投資するか否かの判断は、利回りが高いかどうかという財務的リターンの多寡が基本ではある。それぞれの投資家が利益を追求すれば、市場の「見えざる手」が働き、社会全体も望ましい状況になるのであれば、財務的リターンだけを考えて投資すれば良いのかも知れない。
だが世界を見渡せば、アフリカなどの貧困国はそこからなかなか抜け出せず、先進国でも格差が広がる現実がある。そこに社会を良くしたいという投資家の「見えざる心」を持ち込めば市場の失敗を防ぐことができるのではないかという思いが、冒頭の報告書にはにじんでいる。
報告書づくりに関わった伊藤健・慶応大学特任助教は「財務的なリスクとリターンに加えて、社会的な影響、インパクトがどのくらいあるのかという社会的リターンを総合的に見極める投資判断が今こそ必要だ」と指摘する。
欧米で「21世紀の資本論」(トマ・ピケティ)がベストセラーになるなど、格差拡大をもたらした現代の資本主義の未来に悲観論が漂っている。「良き社会へ」と願う投資家が増えることが、その救いにはならないか。
7月06日WEB
GPIF改革より休眠預金の活用を(日経電子版)
日経電子版に休眠預金に係る記事が掲載されましたので一部を引用いたします。
私が新しい成長の原資の可能性としてみているのが「休眠預金」だ。休眠預金とは金融機関の口座で10年以上出し入れがない預金口座のことだ。毎年、800億円前後が全国で発生し、払い戻しされる300億円を差し引いても、およそ500億円が残り、今までは銀行の雑収入として計上されていた。
休眠預金を銀行の雑収入とみなすより、各国の例を見習って、社会的課題に取り組む団体への助成金や貸付金として活用すべきという議論が4年ほど前に浮上した。現在は超党派の「休眠預金活用推進議連」で議論されている。
銀行は休眠口座の名義人が確認できたら払い戻し義務があるため、口座管理費用という銀行の言い分も一理ある。しかしながら、成長資金の循環という銀行の本来の使命と照らし合わせれば、「眠っている」状態の資金を目覚めさせることは重要だ。
6月、議連の勉強会に招かれ、「持続的成長基金」(仮名)という国民ファンドの設立私案を発表した。社会的課題に取り組むことは持続的経済成長を促進することである。したがって、毎年拠出される資金を政府予算のように「使い切る」のではなく、休眠預金を新しい持続的な成長を促すストックづくりの原資にするという構想だ。「目からウロコ」と評価してくださった国会議員もいらっしゃった。
毎年発生する500億円の休眠預金を「持続的成長基金」としてとらえ、残高から毎年5%を社会的事業の助成に充てる。一方、残った95%から運営費を差し引いた額を、新しい成長を促す株式投資や非上場株に投資するプライベート・エクイティ(PE)投資、または社会的活動への貸し付けの長期投資ポートフォリオとして運用する。長期的に年率5.5%以上の運用成果を実現すれば、500億円は目減りしないのに加え、次の年には新たに500億円分の新たな基金が誕生する。
6月上旬の大阪セミナーでコモンズ30ファンドの個人投資家との「対話」にご協力いただいたシスメックス経営企画本部IR・広報部長の岡田紀子さん
たった5%の払い戻しでも分母となる残高が増え続けるため、まとまった助成金の原資となる。もちろん、5.5%以上のリターンを目標とするため、0.55%という利回り の日本国債への投資は問題外で、あくまでも成長に投資する。
新しい成長の担い手を支えるリスク・キャピタルの出現は、夢のような構想だ。ただ、新成長戦略を推進するには、年金制度というレガシーに縛られるGPIFよりは、異なるリスク許容が可能な「持続的成長基金」というスキームの方が現実的ではないだろうか。
6月03日WEB
6次化ファンド サブファンド出資割合引き上げ 農業者の負担軽減へ(日本農業新聞)
一部では休眠預金をベンチャー投資等に活用すべきとの意見がありますが、政府系ファンドは民間ファンドに比べて規模が大きく、民業圧迫との批判が出ていることや、下記の
記事のように執行率が低い等問題が出ることも多くあります。
国民の財産である休眠預金を活用するにあたり、公益性の低いベンチャー投資への活用は慎重に議論をする必要があるのではないでしょうか。
以下、6次化ファンドに関する記事です。
農水省は、6次産業化を支援するために国と民間で立ち上げた(株)農林漁業成長産業化支援機構(6次化ファンド)の運用で、農業者側の出資の負担を軽くする対策を打ち出した。農業者が一定割合以上を出資するのが要件だが、資金不足で実現にこぎ着けられないケースがあるためだ。政府の産業競争力会議は、農業者の出資比率を引き下げるよう求めてきたが、6次産業化の主導権が農業者から商工業者に移る恐れがあった。最終的に、各県などに設けるサブファンドの出資比率を引き上げることで決着。同省はこうした措置によりファンドの活用を促す方針だ。
6次化ファンドは、農林漁業者の所得確保と雇用創出を目的に2013年2月に発足した。農業者らと、加工・販売を担う商工業者が出資し合って6次化に取り組む新会社を設立する際に、ファンドも協調して出資する仕組み。
支援側の体制は、JAグループや地方銀行が設立した各サブファンドが現場の中心になる。農業者らが、商工業者より多く出資することが条件で、農業者側の主体性を確保できるようにしている。
6次化ファンドは当初13年中に30~40の案件を決めたいとしていたが、これまでの出資実績は23件と低調。これに対し産業競争力会議は、農業者らの出資能力不足が事業立ち上げの障害になっていると指摘。農業者らの出資割合の引き下げを提案していた。
こうした見直しが実現すると、商工業者側の出資割合が上回り、6次産業化の主導権を持っていかれる可能性がある。そのため農水省は、(1)農業者の負担軽減(2)農業者の主体性確保――の双方を満たせる案として、最大50%としているサブファンドの出資割合の引き上げを提示。最終決着した。
6次産業化の事業内容が良く収益性も見込まれるが、農業者らが出資に苦労している場合などに限る。
農業者らの出資割合については、株式会社農林漁業成長産業化支援機構法の施行後3年をめどに行う見直し作業で総合的に検討する方針だ。
また、出資先の事業対象として要望があった植物工場や農業生産についても、加工や流通を主として取り組む場合は認めることにした。農家レストランを経営する中で新たにバジルを使った料理を提供したいなど、事業に必要となった農産物の生産を支援する。
農業参入した企業向けのガイドラインも策定し、ファンドの活用促進に力を入れる。
4月18日WEB
休眠預金議連、来週発足(時事ドットコム)
遂に、休眠預金に係る議連が発足します!
金融機関の口座から10年以上出し入れがない「休眠預金」の活用を検討する超党派議連が来週発足することが17日分かった。公益事業の財源に充てる案などが浮上しており、議員立法で今国会への法案提出を目指す。
議連は自民党の塩崎恭久元官房長官らが発起人となり、全党に参加を呼び掛けている。休眠預金は毎年約500億円に上るとされる。議連の設立趣意書では、休眠預金を弱者救済などの社会的課題を解決するための「民間資金活用の呼び水」と位置付けている。(2014/04/17-17:53)
2月24日WEB
休眠口座情報、2万件紛失...三菱東京UFJ銀(読売オンライン)
読売オンラインにて、休眠口座情報に係る
報道がありました。
このような事態における預金者の権利や銀行の責任の明確化のために、早期の休眠口座に係る法律の制定が望まれます。
三菱東京UFJ銀行が、10年以上にわたって出し入れのない「休眠預金」の口座情報2万1500件分を紛失したことが23日、わかった。
休眠預金は、自民・公明両党が福祉や教育分野への民間支援に活用する方針を固めており、預金者の問い合わせが今後増えるのは確実で、銀行側は管理を徹底する必要がある。
三菱東京UFJ銀は、休眠預金の氏名や口座番号、残高などの口座情報を、データベースから書類に移して保管している。ところが、約90支店で一部の書類がなくなっていることが行内調査で判明した。例えば100枚単位で保管している書類の数枚が足りないなどの事例があった。これまで書類を悪用されたとの情報はなく、外部に流出した可能性は低いとみている。